【ベホマズン】南アルプスへ弾丸テント泊へ(女王/仙丈ヶ岳編 9月3日)
今回は南の女王陛下に会いに行く
朝3時の目覚ましを待たず目が覚める。7時に就寝で2時半起床。日常生活では絶対実行不能な生活リズムだが、山の中では自然とそれができた。2日目である。前日の強行軍のおかげで、テントではぐっすり眠ることが出来た。
2時半に目覚めテントの外に顔を出した時には、既に多くの人が登山準備をしていた。3時には出発するパーティもチラホラいる。自分たちは結局4時出発となったのだが、明らかに後発組であった。皆気合いが入っているのだ。前日の甲斐駒ケ岳に続くターゲットは、そう、仙丈ヶ岳である。南アルプスの女王である。先月、北アルプスの女王陛下(燕岳)に謁見が許されたが、今回も女王陛下に無事会うことができるのだろうか。
登山口まで来てみたが、真っ暗である。ヘッドライトをオフにすると、文字通り光のない世界である。稲川淳二の顔が何故か思い浮かぶ。。。
- 仙丈ヶ岳までの道のり
- 真っ暗。肝試しのような登り道
- 満足度MAXの登り。これ以上のものがあるのか?
- 振り返ってみるとこの場所が一番素敵だった
- 女王陛下に謁見するために接近を開始する
- 笑顔だらけの山頂
- 馬ノ背ヒュッテは向けて下山を開始
- あとは下山するのみ。一直線にテント場へ向かう
- 最後に
仙丈ヶ岳までの道のり
テント場のある長衛小屋から仙丈ヶ岳に向かう場合、馬ノ背ヒュッテ経由か、小仙丈ヶ岳経由のどちらかを選択することになるが、あまりよく考えず後者を選択した。これは結果的には大正解であった。
地図上のコースタイムは、登りが4時間20分、下りは3時間ということで、休憩や食事を含めると8時間程度のコースとなる。4時出発なので、正午には降りてくる計算である。
真っ暗。肝試しのような登り道
真夜中の捜索隊のような気分である。というより、もし1人だったかなり心細い。ヘッドライトと自分の足音以外、光も音もない世界である。登り始めは少し勾配もあったが、普通の登山道で歩きやすい。ただ単純に暗くて心細いだけである。
30分も歩かないうちに2合目の標識と遭遇する。北沢峠から登り始めるルートとここで合流する。この間、誰とも会わず。テント場にいた人たちは、どこに消えてしまったのだろうか?
2合目の標識のあと、登り道が続く。登山道はとても歩きやすい。そして、この標識直後の標識で、早くも登り渋滞が発生。なぜか険悪な雰囲気の10人くらいのパーティがいた。朝早くイライラしていたのだろうか?自分と先輩は、この時あることに気づいた。体が軽い。泥のように眠り睡眠十分、そして一晩過ごし標高にも完全に順応。信じられないくらい体調がいいのだ。序盤の登りは、そこそこの負荷があったはずだが、全く疲労感なくガンガン登り続けることができた。
日が昇ってきた。日の出時点で森林限界の上にいられたら最高である。ただ、そのためには...そうか、3時出発組は、ご来光目当てだったのか。
4合目到達。快調だ。そして、陽も登って明るくなってきた。
徐々に標高を上げて行く。体調に加え、気温も低く(ヒンヤリしている)ため、最高の登山コンディションである。ペースをあげつつ、分岐点を目指す。
尾根に出る。標高的には、そろそろ小仙丈ヶ岳と馬ノ背ヒュッテの分岐のはず。
第1のチェックポイントである分岐点到着だ。右が馬の背、真っすぐ登るのが小仙丈ヶ岳方面。ここで小休憩をとる。まだまだ樹林帯。この先、どんな景色が待っているのかワクワク。降りてくる人と会話をしたのだが、森林限界の先は凄いらしい。
満足度MAXの登り。これ以上のものがあるのか?
分岐点からも、岩岩の登り道を進む。何度もしつこいが、体調がよく、涼しい。負荷は確かにあるのだが、抵抗なく登って行けて気持ちいい。唯一の不満は、陽が射し込み、コントラストが強すぎて、写真がうまく撮れない。
前方が開けてきた。周りの樹木の背も低くなっている。間もなくだ。何が見えるのだろうか?
絶句。
雲海、朝陽、甲斐駒ケ岳、向こう側に八ヶ岳。心底、ここまで来て良かったと思える。
もう少しだけ、とても低いが樹木が覆う登りが残っていた。ただ、この時点で、登っているという感覚はゼロ。早く先に行って、次の絶景が見たいの一心。
わ!
綺麗な、コンモリとしたピークが見える。あれが小仙丈ヶ岳か?
6合目の標識通過。標識の背後は、朝陽に照らされた雲、甲斐駒ケ岳。やばい。
刻一刻と陽が高くなり、進む先を照らす。登っているという感覚は相変わらずゼロ。疲れで歩みを止めるのではなく、美しい光景に溜息が出てしまい、自然と足が止まる。幸せである。
北アルプスとはまた違い、優しいハイマツの絨毯。
登って行くというか、進んで行く。高原だ。
後を振り返ってはいけない。ヤバイ光景で足が止まってしまう。
息を切らせるのではなく、溜息を吐き続け小仙丈ヶ岳に着いた。
振り返ってみるとこの場所が一番素敵だった
小仙丈ヶ岳は、ちょっとした休憩可能なスペースとなっている。甲斐駒ケ岳だけではなく、八ヶ岳があんなにくっきり見えるとは。
横を見ると、北岳。薄ーく雲がかかっていて、朝陽が照らして膜のように見える。そして、その向こうには富士山。標高1位と2位を同時に拝める。嗚呼。そして、ここから視線を右側に移してはいけない。
。。。。。。。。。。。
美しすぎる。
とりあえず、何だかわからないので、跪く。
そして、15分ほど、ぼーっと眺めてみる。
あそこに登っていいのだろうか?本当に美しい。
水分をとり、ちょっとだけ行動食を口にして先に進むことにした。この時間のこの場所にいられて幸せ。こちら側のルートを選択して正解だった。
女王陛下に謁見するために接近を開始する
なんで、そんなに緑を綺麗に纏っているのでしょうか...
北アルプスの女王燕岳は、凛とした雰囲気を醸し出していたが、南アルプスの女王は、もっと優しく明るい雰囲気だ。嗚呼。
進む途中、慎重に進まないといけない岩場も登場。陛下に見とれてばかりでは危険である。
俺も写せとばかりに主張する8合目標識
謁見の間に進む。城門くらいには差し掛かったのだろうか。
稜線をひたすら進む至福の時間。カメラもフル稼働中。
標高は相当高くなってきている。息は切れるのだが、苦しくなく、快感さえ覚える。完全に色々なものが麻痺しているようだ。
おや、最後の最後で随分とゴッツイ岩が見える。まさか、あれが陛下?
いや違う。どうやら岩の城門だったようだ。
まだもう少し歩く必要がある。見た瞬間、どこがゴールかわかる。人がいっぱいいる。
しかし、凄いカールだ。小仙丈ヶ岳から見えたカール(小戦場沢カール)はハイマツに彩られ綺麗な緑を纏っていたが、背後の薮沢カールはジャリジャリで、噴火口っぽい外観で力強い。そして、この稜線の道から見える光景もヤバい。
すごい。
見えるもの全てが凄い。
だから、振り返ってはいけないのだ。ヤバいのだから。
絶叫しながら山頂到着。記念すべき初の3,000M級登頂。その感動よりも、森林限界を超えてからの溜息しか出ないような絶景に、完全に打ちのめされた登りだった。こんなにも苦しくない登山は今まで経験がない。絶対また来よう。
笑顔だらけの山頂
この山頂付近ですれ違った人、出会った人たちは、皆笑顔であった。凄いパワーを持った山だ。こんなもの見たら、嫌なことは全て忘れられる。
ラピュター
マチュピチュまで行かなくても、これで良くないか?ちなみに、これは山頂からみた、「大」仙丈ヶ岳方面である。山頂からは、大仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳&八ヶ岳、写真はアップしていないが、遠くには北アルプス、中央アルプスまで見える。登山やってて良かった。
カールの下を眺める。カールの先に見えるのは仙丈小屋だ。
山頂は人がいっぱい、皆が思い思いに記念撮影。邪魔になってはいけないので、その場を離れることにした。お腹が減った。小屋でランチ休憩をすることにした。
下りながら、この景色がずっと目の前にある。嗚呼。
下っていくとこの標識。なんとも忙しい標識だ。
振り返って、今歩んできた稜線を確認。
仙丈小屋到着。ここでランチ。テント泊に準備した食糧をふんだんに投入。よく考えてみたら、この時点で9時。ランチというか朝ご飯である。
このカールと。
この景色を眺めながらの贅沢な食事タイムである。
馬ノ背ヒュッテは向けて下山を開始
30分以上、この場所に留まってしまった。疲労感は全くないが、あまりに居心地がよく、根が生えてしまったようだ。
この道を進むと小仙丈ヶ岳に戻ることができる。
しかし、下りは別ルートを見てみたかったので、当初の計画通り、馬ノ背ヒュッテに向けて下山を開始する。相変わらず正面には存在感がすごい景色が続く。
稜線を進む登りと違い、こちらのルートは、一気に下っていく感じだ。甲斐駒ケ岳や八ヶ岳に向かって進んで行く。
振り返ってはいけない。カールと小屋、そして雲がヤバい。
尾根道を進む。このヒュッテまでのルートはとても歩きやすい。ただ、勾配が若干あり、登りは結構大変かもしれない。
しつこいが、振り返ってはいけない。なんだこの景色は。。。
下りながら溜息をつくことになるとは思わなかった。そうこうしているうちに、ヒュッテが近いことを知る。このあたりは、もう樹木が高くなっている。
馬ノ背ヒュッテ到着。名前はごっついが、女性が経営しているのだろうか?かわいいメニュー看板があったり、山小屋の中もとても清潔感が漂う。泊まってみたい場所である。山頂近くの仙丈小屋は水涸れ中だが、ここでは水場がしっかりあった。水を補給しようと思ったが、ペットボトルのソフトドリンクが置いてあったので、少し割高だがソルティライチを購入した。
あとは下山するのみ。一直線にテント場へ向かう
ヒュッテを出発後、水場に出る。分岐となっているが、大滝の頭(登りの分岐点)方面に向かう。地図上のコースタイムだけ見ると、小仙丈ヶ岳コースも馬ノ背コースもそれほど大差がないことになっているが、馬ノ背は下りで使うと、何となく早く感じる。
先に進もうと思ったら、清流と樹の間から、甲斐駒ケ岳が依然としていらっしゃるのが見える。陽が完全にあたり、白く美しい山肌がわかる。
甲斐駒ケ岳を眺めながら登山道を進む。手前に写る紫の花はトリカブト。
ヒュッテから分岐点前の道には、数多くの小さな滝がある。相変わらず撮影の腕前が追いつかず、コントラストをちゃんと表現できず。。。それはさておき、下りのルートでも全く飽きさせない、引き出しの多い恐るべき登山ルートである。
分岐点を目指しひたすら進む。少し歩きづらい場所もある。
分岐点に戻った。この時間から登る人も沢山いた。そりゃそうだ、まだ時刻は10時すぎである。世の中は普通に言えば「朝」と呼ぶ時間帯だ。この分岐でトレッキングポールを出し、スピードMAXで登山口まで駆け下りた。
登山口へ到着。左の標識が、この記事で最初に掲載した写真である。お化けが出そうな夜明け前とは全く雰囲気が異なるのは当然か。テント場に戻ったのは11時半前。稜線に出てから絶景に驚いてスピードダウンしたり、30分以上の食事休憩をしたにも関わらず、7時間半で降りてくることが出来た。それほど快調な登山であった。
テント場に戻りテント撤収、荷物をまとめ、1時頃北沢峠をバスで出発。広河原から甲府駅行きのバスが2時発、甲府駅は4時着。家に到着したのは7時。移動時間6時間は、登山している時間よりも疲れを感じた。特に、登山後に2時間狭いバスで過ごすのは、かなりシンドイことがわかった。若干割高だが、乗り合いタクシーで移動することも次回の選択肢に入れておいた方がいいかもしれない。
最後に
無事弾丸テント泊が終了。1日目の荒涼とした甲斐駒ケ岳、2日目のキラキラと美しい仙丈ヶ岳のコントラストが何とも印象的な2日間だった。体調面も、強行軍でボロボロの1日目と、睡眠十分な2日目で正反対であった。体調万全で甲斐駒ケ岳を登っていたら、もっと楽に感じたかもしれないだろうか。そういえば、元々台風でこの登山計画は中止寸前だったことを考えると、これだけ天気に恵まれる結果になるとは、なんという幸運だろうか。台風一過は、案外登山の狙い目なのかもしれない。
今回はベースキャンプとなったため、テント泊といいつつ、登山中は軽装で過ごすことができたので、前回の鳳凰三山よりも負担が少なく快適なテント泊となった。とは言うものの、色々とテント場で思ったことなどもあるので、それはまた別の機会に書きたいと思う。
仙丈ヶ岳、また行きたい。
甲斐駒ケ岳登山中に発見したキノコ(毒?)