【暖暖暖】Patagoniaナノエアはあったかいぞお!(Patagonia Nano-Air)
メレンゲのようなジャケット
雪山シーズンも始りつつある。登山ショップに行ったとき、雪山登山のためのウェアの組み合わせをあれこれ考えさせられた。
【昨年の雪山のスタイル】
- アンダーウェア、中厚手のメリノ、フリース(R2)が行動着
- 動き始めが寒ければナノパフを羽織る。稜線出る前の休憩時も同様
- 稜線ではハードシェルを被る
昨年吹雪の権現岳でも、なんとか凍えることなく過ごせたので、多分この組み合わせは悪くはないはず。今年も同じセットで問題はないのだが、最近PatagoniaのR2が完全に「最強の普段着」になってしまい、こいつを登山に持ち出すと、家で着るものに困る、という謎のジレンマが発生してしまった。そういうわけで、R2をもう一枚買うか、もしくはR2ではない別の何かを買うか、という決断を迫られた。
ナノエアを選んだ理由 その1
Patagoniaショップに何度か通い、R2とナノエアを何度も試着した結果、最後は、ナノエアを購入した。R2はフリース、ナノエアはアクティブインサレーションのカテゴリーで、厳密には異なるジャンルのようだが、とりあえずは、ベースレイヤーの上に着られるという点では共通する。
雪山登山を想定すると、R2にしろナノエアにしろ、稜線ではこの上にハードシェルを羽織るため中間着として期待がされる。一方、ハードシェルを装着するのは稜線に出てからであり、冬場であってもアウター的に使う時間帯も長い。R2を買えば中間着として無難な選択だし、登りであればフリースも十分行動着になる。しかし、今回は直感的にナノエアを選んでみた。
柔らかい。
生地は、化繊ダウンとも、フリースとも違う、何とも不思議なフワフワっとした独特のタッチである。さらに試着してみると、着心地の良さにまず驚く。フリースの心地よさとはまたひと味違う。
丸めてみると、柔らかさがわかる。そして。
暖かい。
同じく試着していて、フリースよりも保温性が高い(つまり試着中暑く感じた)ことも印象に残った。意図的に通気させるフリースよりも、密閉された感じがする。何となく中間着というか、アウターっぽい感じもする。
柔らかさと暖かさ。R2とは違う使いやすさがありそうな気がした。
なお、素材はナノパフのようにツルツル、シャカシャカはしておらず、フリースの様に起毛もしていない独特のタッチ。毛玉ができやすいという前評判だったが、確かに摩耗には弱そうな気がしないでもない。
ポケットは胸に2個、お腹のところに2個。ジッパー部分は防水加工はなし。ちなみに、ポケットに手を入れると、これまた暖かい。
ナノエアを選んだ理由 その2
【選んだサイズ】S
R2はMを購入しているので、SとMで迷った。Mだと余裕あって、中に何枚か重ね着が出来そう。Sだと体にピッタリ吸い付く感じ。ただ、素材がとっても柔らかため、ピッタリサイズでも窮屈さがない。店頭で試着した際、保温性が高そうなので、余程の高山地帯か悪天候でもない限り、ベースレイヤーは薄手か中厚手かと。よって、サイズはピッタリサイズのSを選定。
【選んだタイプ】フード付きフルジップアップ
本当はフードは不要で、ジャケットタイプ(フードのないやつ)が欲しかったのだが、在庫切れ。ハーフジップタイプは在庫が豊富に残っていたが、明らかに保温性の高そうなウェアを買うのに、わざわざ着脱が難しいハーフジップを選択肢に入れる意味がわからず除外。ナノエアは、登山口からずっと着ていられる(脱ぐ必要がない)という評価もあり、脱ぎづらさは関係ないという考えもあるが、移動中や春先なんかで「ちょっと羽織る」ようなケース、急登で思いっきり換気したいケースなども考えて、やはり全開できるタイプがいいと思った。好みの問題でもあるが。
なお、フードの部分はビヨ〜ンと伸びるので、素材の柔らかさとあわさって、フードがいい感じで頭にフィットする感触である。
【選んだカラー】ブラック
残念ながら今年のラインナップに赤はない。暖色系は派手なオレンジがあったが、店頭にはハーフジップアップのみ。ジャケットタイプも在庫がないので、フルジップで選ぶとすると、ブラック、ネイビー、変な迷彩柄、そして茶色に黒の水玉みたいな謎のカラーの4つ。どれを着ても登山感の乏しい風合いに見えたが、であれば、一番シンプルなやつでいい、と思いブラックにした。電車移動とか街中に出たとき、一番無難でもある。ただ、この材質、砂埃が付着しやすいため、ブラック、ネイビーのような暗い色だと汚れが目立つかもしれない。
出撃Part1 雪のある場所で威力を試してみる
場所は12月16日の越後湯沢。天気は良く、麓は風もない。新雪がいっぱいの道、気温は氷点下3度である。雪山としては暖かい環境でもある。
こうやって写真で見返すと、ブラックも悪くない。
保温性は抜群である
家を出る時からずっと装着。新幹線の中では、少し暑く感じたが、外ではちょうどいい。フリースにソフトシェルを羽織っていた同行者は、序盤寒いを連発していたが、ナノエアに包まれている自分は寒さは全く感じず。
ボトムスは、メリノのタイツに中厚手パンツだったが、こっちは冷たいなーと感じたし、手袋をしないと手が冷たくて仕方なかったので、やはり結構寒い環境だったはず。ナノエアはコンパクトな作りでありながら、素晴らしい保温性である。
勾配はあまりない場所で、トレースはあったのだが、その後に雪がまた降ったようで、こんな感じのフカフカの雪と格闘して歩くことになる。事前の情報ではもっと雪が少ないと予想していたため、ワカンは家に待機。激しくを後悔した。ただ、登山的にはスピードダウンなのだが、ナノエアを試すには良かったのかもしれない。
ずっと着ていられるか?
モフモフをかき分けて行く。
だいたい2時間強、緩い雪の坂を進む。序盤は靴が隠れるくらいの雪の深さだったが、途中からは膝近くまで埋まるところもあって、結構なパワーを要する歩行であった。さらに30分程度登りが続く with 膝丈くらいの雪。
顔からは汗が噴き出して、水もガブガブ飲むほど発熱したが、何とナノエアを終止着ていられた。流石に一番暑かった時はジップを全快にしたが、終止着ていられた、ことに変わりはない。暑がりで汗かきの自分にとっては衝撃的なことである。
そして、休憩したりザックからモノを取り出すために立ち止まった時、保温性と防風仕様により、体が冷えることもない。世の中便利なものがあるものだ、とシミジミと思った。
素材的に絶対防水ではないのはわかるが、撥水加工あり。ちょっとの雪は全く問題はなし。
ちなみに、ナノエアの下は、ICE BREAKERのメリノウールの中厚手ベースレイヤー。Oasis LS Creweという製品。中厚手(200)となっているが、すっごい薄くて、肌触りも最高によろしい。また、ナノエアがピタッとしたサイズなので、これくらいの薄さのベースレイヤーでちょうど良かったかもしれない。
出撃Part2 稜線で耐えられるか確かめてみる
越後湯沢では、雪の積もる林道を中心に往復4時間程度の行動であった。フカフカの雪に足をとられ、運動量としてはかなりあり、ナノパフの行動着としての機能を試すにはよかった。しかし、連続した登り、あるいは稜線ではどうか。第2回のトライとして、長野県の浅間山(黒斑山)で使って見た。
登山口での1枚。寒い、とにかく寒い。手袋なしだと冷たくて痛い。中厚手パンツとメリノウールのタイツを履いていたが、足下の冷えには耐えられず、登山口からハードシェルを履くことにした。一方の上半身は、ナノエアのみで問題なし。保温性は改めて凄いと感じた。
黒斑山は行動時間は登り2時間。息が切れるほどの急登とはいかないが、そこそこの登り道。また途中からは樹林帯と稜線のミックスした様なルートである。
まず登りは、前回同様、スピードを出したりして放出する熱が多くなると、ファスナーを全て締めた状態では耐えられない。適宜、開け閉めして温度調整を図った。これは、いつも着るフリースでも同じである。また、終止ザックを背負う背中側も、特に不快感もなかった。この日は風がほとんどないため、雪があっても登れば暑い。そう考えると優秀なジャケットである。
稜線だが、繰り返しになってしまうが、風があまりないため、ナノエアのみで終始過ごすことが出来た。登り/縦走/休憩と、それぞれ体から出る熱は違うし、アウターに求められる機能も異なってくるが、1枚で冬山を乗り切れる、やはりカバー範囲が半端ない。
ちなみに、ちょっとだけハードシェルを上から羽織ってみた。前のファスナーは開けっ放しで稜線を歩いたのだが、熱がこもって暑い。風がないと、ハードシェルを羽織る必要性がそもそもなく、ナノエアの中間着としての能力は、もっと厳しい環境のときまで待つとしよう。
R2との使い分け
R2は部屋着、ナノパフは登山着。。。。ではない。
【R2の方が優れている点】
- 通気性があるため、温度調節に優れていると思う。アウターの出し入れ等の手間は面倒であるが、シェルをかぶれば保温性は高い。
- ハードシェルを被って中間着にしても、透湿性の高さが生きる。
【ナノエアが優れている点】
- 単独でアウター的に使えるため、着脱の手間が少ない。
- 登り始め、登りの最中、休憩時間と単独でカバーできる行動範囲が広い。
- 冬山の稜線でも、風がなければアウターとして十分いける。
- 登山の帰り道は街中でも寒いが、そのまま着ていれば暖かく家まで到達。
意図的にスースーするように作ってあるR2は、寝間着/部屋着としては最高である。また、この上にシェルを組み合わせることで保温力が上がる。組み合わせ次第で、色々な使い方ができる。一方のナノエアは、アウター的な要素もあり、単独で色々出来てしまう。選択としては悩ましい。
ハードシェルを羽織り、ナノエアを中間着として試す機会が1度(しかも短時間)なので、何とも言えない部分もあるが、中間着としては通気性に優れるR2に軍配があがるような気がする。本文にも書いたが、ハードシェルを上に重ねると、ナノエアに熱がこもってしまう。ただ、もっと風の強い場所で試せば、あるいは違った印象をもつかもしれない。
現時点では、行動時間があまり長くなく、天候が安定していている冬山はナノエアオンリー(もちろんレインかハードシェルは持って行く)で良いと思う。登山中だけではなく、登山前、登山後も暖かく過ごせる。ただ、行動時間が長かったり、初めて挑戦する山などは万全で臨みたく、中間着としても絶妙な存在感を出すR2を持って行くと思われる。保温については、次に登場するナノパフも含め調整すれば良い。
最後にもう1個、ナノパフとの棲み分けである。ナノパフは現在行動着では着用しておらず、常にザックの中で待機している。このため、R2、ナノエアとも競合しない。
まとめ
- ナノエアは柔らかくて、フワフワしているので着心地が良い
- ナノエアの保温性は、薄くコンパクトな作りから想像できないくらい良い
- ナノエアは雪道をガシガシ汗だくで進んだり、登ったりしても着ていられる
- 行動中のアウターとして、また休憩時間や帰り道までカバーするため、使用範囲は広い
- 通気性はR2の方がよく、透湿性も同様。ハードシェルとの相性もR2は高い。
- 多少の風はナノエアは防いでくれる。ハードシェルをナノエアの組み合わせは、相当寒い環境であれば良いが、個人的にはやは暑い。
- ナノエアは汚れやすそう(ただ、洗濯機OK)、摩耗には強くなさそう
- アウター機能としてはナノエア、中間着として見ればR2 (暑がりの方は)
正直なところ、R2が最強の部屋着であるのであれば、ナノエアは最強のコンビニに行く時のアウター。どっちも普段使いからガンガン行ける良い製品だと思った。
余談
出撃Part1では、本来は平標山に登る予定であったが、豪快に2時間寝坊、そしてアプローチの林道が予想以上の積雪で、ワカンなしでコースタイムの2倍を消費。平元新道を登り始めてしばらくは頑張ったが、急登&膝下まで埋まる新雪でスピードも全くあげられず、途中で断念。天気が良かったので、非常に残念な登山になってしまった。
雪山準備にTOO MUCHはない。