【雪山の失敗】真冬2月の権現岳で靴の限界に至る
因縁の権現岳のパート1
2月某日、年明けから続く繁忙シーズンを乗り切ったので、八ヶ岳に登って綺麗な景色を見ようと思い立った。選んだ山は「権現岳」。八ヶ岳の一番南側。特に、この山にこだわりがあったわけではないが、無意識にここを選択した。天気予報では晴れ。いつもの装備を詰め込んで山梨へ。
ルート時間を考え、「八ヶ岳いずみ荘」という温泉付きの宿に宿泊。素泊まり3,000円だったが、とてもきれいな施設で、温泉まで入れてしまう。小海線の甲斐大泉駅から徒歩5分ということで、前泊する場所としては悪くないお宿である。
さて、いざ出発!
撮影場所:天ノ河原
見よ、この遠くまで見渡せる冬の空。
雲があるのが気になるが、絶好の天気である。
- 権現岳のルートとスケジュール
- 天女山入口から天ノ河原まで(いきなりトラブル)
- 前三ツ頭までの長い道のり(雪との格闘)
- そしてその時がやってくる
- 冬山にオーバースペックはないのかもしれない
- この日の装備(備忘記録)
- 最後に
権現岳のルートとスケジュール
「いずみ山荘」を6時半に出発。登山時期は2月上旬、観音平から入って行くルートは冬季は閉鎖。 このため、天女山入口→天女山→天ノ河原→前三ツ頭→三ツ頭→権現岳山頂、というルートを選択。コースタイムのモデルは登り4時間半。
天女山入口までタクシーで乗り付け、身支度を整えて7時に登山開始。ノンビリ登ってお昼過ぎくらいに頂上に着けばいい、と思いつつ進む。
天女山入口から天ノ河原まで(いきなりトラブル)
タクシーを降りると、天女山入口のゲートが閉まっている。これは、車が進入しないようにするためのゲート。そいつをヒョイっと避けて、まずは天女山を目指す。
見るからに普通の舗装された山道。
こういうのが一番嫌い。
何と言っても退屈である。
とりあえず、
何も考えず、道なりに進む。
上記写真に、木の看板が見える。
実は、ここから侵入して天女山を目指すのが正解。
そう、何も考えず、道なりに進み、クネクネと続く道路を進んでしまい、大きく時間をロスしてしまった。しかも舗装道路の雪道である、退屈この上なく、テンションももの凄く下がる。天女山を拝み、ここでアイゼンを装着し、15分ほど登ったところで、天ノ河原に到着。冒頭の写真のように、綺麗な展望に心を癒され、ようやくテンションもあがってくる。
前三ツ頭までの長い道のり(雪との格闘)
地図では、天ノ河原から前三ツ頭までが3時間。長い長い登りである。
新雪を1歩1歩、ググっという音とともに踏みしめ、ひたすら前進。
トレースがあって助かる。
しかし、、、前方の雲行きは、明らかに怪しい。
まだまだ樹があるが、このあたりから、様子が一変する。
写真ではまだトレースがあるが、10分も歩くと、トレースが消える。
時折、強い風が吹き付けるようになる。樹があるのに。
強風で新雪が舞い上げられ、トレースはかき消されてしまったようだ。
パウダースノーに、足が膝くらいまで埋まる
ピッケルを差し込むと、何の抵抗もなく、スルスルっと雪に飲み込まれ、この通り。
新雪をかき分けて進む羽目になる。
ワカンを買ったのは、この権現岳トライの後のため、アイゼンのみ。
新雪を時折踏み抜いてバランスを崩す、傾斜があるところは新雪が崩れてしまい、足場が確保できない。テンションと体力が一気に失われる。
心を無にする。
.....
前三ツ頭到着!
頑張って登ってきたのに、風と雪。笑ってしまうような悪天候
最初の青空はどこへいった。
そしてその時がやってくる
前三ツ頭には、何人かの登山者がいた。(この日出会ったのは、この数人だけ)。
皆、ここから先に進むか考え込んでいる。
ここから山頂は1時間半くらい。風も雪も耐えられないレベルでもない。しかし。
足が冷たい。
雪山登山中に靴の中が冷えることはあっても、指を動かしたりすれば緩和するケースがほとんどだった。しかし、今回の冷え方は半端ない。
稜線に出るまでの数時間、足を新雪の中に入れ続けた影響で、靴が完全に冷えてしまったようだ。しかも、新雪との格闘で靴の中は汗をかいてしまい、靴の冷えがまとわりつく。ここに稜線の風である。結果、足の指が痛いくらい冷たくなってしまう。靴下はウールの厚手だが、本当に履いている?と思うくらいの感触。
足以外は、防寒に問題はなく寒さは感じないが、往復3時間、この状態で「足」はとても耐えられない。ここの決断ははやかった。
下山の時間である。
来た道を引き返す。下山は惰性で歩ければ、一気に進むものだが、雪が深く下りも苦戦。自分が1時間前につけた足跡も、見事に消えていた。幸い、高度を下げていくと、足の冷えは収まった。
冬山にオーバースペックはないのかもしれない
足が冷えてしまった原因は、明白かもしれない。
この日履いたのは、マインドルのジョラスGTX。ハイカットブーツで、硬さも十分ある靴だ。後ろコバもついているので、雪上歩行もある程度想定されている。しかし、どうやら、新雪に何時間も格闘するほど保温能力はなかったようだ。そこに、稜線で風があたり、一気に冷えたのではないかと思われる。
そもそも、深い新雪に覆われている想定をちゃんとしていなかった時点で、明らかに油断していた。さっさと諦めて下山を開始したことだけが、唯一の明るい材料。登山開始で、道を誤ってテンションが下がったとき、「今日は嫌な感じがする」と直感的に感じたが、見事に的中した。
この日の装備(備忘記録)
オスプレー赤ザック38リットル使用。
【レイヤリング】
いつもの冬山と変わるところなし。スキンメッシュ→メリノウール薄手→フリースが行動着。稜線近くからハードシェル装備。上半身、下半身ともに全く問題なし。予備のダウン(化繊)は、終止ザックの中で待機。
【雪山装備】
まだワカンを持っていなかったので、ピッケルとアイゼン、また強風対策でニット帽、目出し帽、いつもより多めの手袋たち。ニット帽はかぶったものの、幸い、目出し帽は出番なし。山頂までいかなかったので、森林限界の滞在時間が短かったためである。
最後に
装備のグレードを決めるとき、「今日はこのくらいでいいかな」、というのは危険だと痛感。高尾山に厳冬期用ブーツ、というのは流石にないとして、多少重くなろうと、荷物が増えようと、オーバースペック気味に見えてしまっても、準備不足になるより遥かにマシ。冬の登山は、「オーバースペックはない」、これを心に刻む1座になった。
なお、過去の記事でマインドルの靴に言及しているが、そこで、森林限界超をお勧めしていない理由は、この体験があったためである。
更なるトラブルは以下の記事にて。。。