【ソリ】残雪期の至仏山。パノラマ展望と高速下山の巻(2018年4月21日)
残雪期の登山は皆さんお気をつけを
4月も後半に入った。仕事の都合でお互いのスケジュールがなかなかあわなかった「先輩」から、週末登山の誘いを受けた。恐るべき脚力を持つこの人物を満足させるために、何を提案できるだろうか。甲武信ヶ岳、丹沢山、秀麗富獄十二景のどこかなど、とりあえずドM系のコースを頭に思い浮かべる。しかし、本人から「尾瀬」というキーワードが聞こえてきた。
尾瀬、おぜ、オゼ、OZE....
桟道を歩く山ガールの映がなぜか思い浮かんだ。しかし、待て。今は4月。都心は暖かいが、高山帯はまだ雪山。でも尾瀬周辺の山は一体どんな状態なのか?そんな楽しい事前のイメージトレーニングをしつつ、当日を迎えた。今回は至仏山。
尾瀬に行こうぜー。どうやって?
百名山の至仏山は、これまでももちろん候補になったのだが、何と言っても日帰りではアクセスが悪い。オーソドックスに電車とバスで行こうとすると、上毛高原まで新幹線で出て、そこでバスを乗り継いで登山口に11時。コースタイムは長くはないコースではあるが、無雪期であれば考えなくもないが、雪のある時期はちょっと...11時に登山開始というのは、個人的には「ない」。しかし今回は、先輩が車を出してくれるという幸運に恵まれ、車で現地までアクセスが出来た。
4時台に都心を出て、戸倉という場所に駐車。登山口にも駐車場はあるが、すぐに満車になってしまうようだ。戸倉には7時すぎに到着したが、既に登山口付近は満車のため、我々もここからバスで向かうことにした。バスの他、乗合タクシーも多数あり、アクセスには不自由しない。
鳩待峠に到着。ここが出発地点である。
激混みではないが、かなり登山客が居る。しかし、よく見ると、スキー板やボードを担ぐ人が多く、バックカントリーの方々が多数を占めた。逆に登山オンリーの方がマイノリティ。不思議な世界である。
鳩待峠から小至仏山を経由して、最終目的地の至仏山へ至る(地図では鳩待峠から時計回りに進む)。さらには、この残雪期は、至仏山から、その先の「山の鼻」まで下山することが許されている。至仏山ー山の鼻の間のルートは、通常時は「登り専用」となる。また、この至仏山は、植生保護のため、GWから1ヶ月ほどは登山禁止期間となるとか。このため、残雪期登山や山の鼻へ下るルートを楽しめるのは、極めて短い期間のみということで、今回は何ともラッキーな時期にここを選んだようだ。
最初はナメて登り始めた(登山口から稜線まで)
登山口からしばらく、緩い傾斜の白樺地帯を登って行く。普通に会話して進めるような平和な感じ。どういうわけか、尾瀬のイメージがそうさせるのか、至仏山は緩やかな牧歌的な山という先入観があったが、まさにその通りになった。
徐々に傾斜がついてくる。残雪期、そして本日気温が非常に高く雪がシャリシャリしており非常に歩きづらい。あまり好きではない感触である。
左からグルッと回って、あの稜線の右側まで行く。結構遠いではないかと心の中で。。。
しかし、この樹林帯を少し抜けたくらいの中途半端な高度でもこの眺望。これは結構当たりではないか?と一方で思ったりもして、シャクシャクと歩みを進める。
妙に暑いなと思って横を見たら、別の登山客が歩くところが目に入って、この場所の傾斜を知る。結構良い角度着いています。ここをスキー板を装着しながら登っている人もかなりいて、凄いなと思ったりもした。しかし暑い。
稜線から横一直線に進むが。。。(稜線とトラバース)
ここはほぼ稜線に出たところ。丁度ボードを担いだ2人組がいい感じで談笑していたので一枚背後から撮らせてもらった。あの板は重いのだろうか?
起伏があるルートだ。登る時は結構グッと登らせる。
こうやって全体を撮影すると、それほどの傾斜がついた斜面には見えないのだが、どうもこういうトラバース的な道は苦手である。丁度1年前権現岳で滑落して以降、トラバースや片側が切れている雪道に恐怖感を抱くようになってしまった。
とりあえずは一直線に進む。
まだまだ続くらしい。それほど登りがキツいわけではないが、苦手な道が続くので、変な汗をいっぱいかいてしまい、早く終われと心の中で念じ始める始末。
!!!
振り返ったらこんなんになっていた。雪質から踏み外しても止まるのはわかっているが、そういう問題ではない。序盤の余裕は既にこのときない。
ようやく終わりが見えてきた。
登り切って頂上まであと少しのところまで来ると、至仏山の反対側の山々が見えてきて、一瞬息をのむ。凄い景色が出てきたぞ。
至仏山の北側はまだまだ冬景色。それにしても立派な山々だ。この開放的でどこまでも広がる景色を見ながら、山頂へ到着となる。ここまで2時間半なので、コースタイム通り。
ノンビリランチと下山
山頂から見るパノラマは、かなりキテます。谷川岳に初めて登ったときよりも感動したかもしれない。これは北西側(日本海側)の景色。
尾瀬ケ原と燧ヶ岳のある東側。
南東側は日光サイド。モヤってしまっているが、男体山やら日光白根山。
これらを眺めながら食べるランチは最高である。コーヒーも飲み充実の30分。来て良かった。
というわけで、山の鼻方面へ下山開始。ズボズボズボとスピードあげて、尾瀬ケ原めがけて突進して行く。気持ちいいのなんのって。
途中で一部夏道が出ていた。これはこれで雰囲気があって良い感じである。その後、再び積雪地帯が始まり、スボズボと下っていく。すると。
後方から変な音をたてて接近する生命体。
脇を通り過ぎると、そのまま一気に下の方へ。。。シリセードを使う同行者である。
この傾斜である。ここをソリで滑り降りようが、勢いに任せてダッシュしようが、超スピードでどんどん高度を下げて行ける。これほど痛快な下山は記憶にない。山の鼻まで1時間くらいで降りることができた。
急斜面を一気に下って、開けた場所に出た。この雪の下は、もしや湿原か?
山の鼻のロッジでトイレ休憩。ここから東に行くと尾瀬ケ原。しかし、本日時間もないので、このままバス停まで戻ることにした。地図だと3キロほどと出ているので、1時間まったりと歩けば到着か?と勘違い。
まさかの最後の登り返し。
- 登山口(鳩待峠):標高約1,600M
- 至仏山山頂 :標高約2,200M
- 山の鼻ロッジ :標高約1,400M
そう、急斜面を一気に駆け下りて爽快になったのは良いが、スタートの登山口よりも200Mも標高を下げてしまったのだ。つまり、そこから3キロ、約1時間、ジワジワと200M登ることになる。この最後の1時間は結構しんどかった。
バス停に戻ったのは午後2時半。鳩待峠から時計回りにぐるっと一周するコースだったが、ランチタイムも含めて6時間弱で回った計算だ。距離、コースタイム、そして負荷としてはちょうどいい。
最後に
初尾瀬、初至仏山だったが、ここは冗談抜きでおすすめできる。自分はトラバース恐怖症でちょっと怖く感じるところもあったが、死の香りがするような場所はない。そして、稜線、山頂から見えるパノラマと、急降下できる下山道は、スキーやボードがなくても、十分に爽快感を味わえる。さすが百名山!
GWあたりから入山禁止期間が開始となるため、このコースはあと2週間ほどしか楽しめないが、チャンスがあれば、是非選択肢に含めるべき山だと思う。
写真では雪がいっぱい映っていたが、風がない限り、ガチガチの厳冬期対策は不要。登りは、Tシャツでもいいくらい。稜線でも、ソフトシェル一枚羽織れば十分だし、手袋も使わなかった。残雪が不安定なので、ストックがあると良い。また、アイゼンはあっても良いが、夏道が出ている場所もあるので、着脱が楽なチェーンか軽アイゼンくらいで問題ないと思われる。自分は、終止チェーンだけで歩いた。
チェーンとLOWAチベットの組み合わせ
おしまい。